出汁素材「かつお節」Ⅵ

<「かつお節」の栄養>

 

 「かつお節」はとても栄養価の高い自然食品です。筋肉、血液、骨をつくるもとになり、私たちの体に欠かすことのできない良質の「タンパク質」を主成分に、高血圧の予防や筋肉の動きをよくする「カリウム」、強い歯や骨を作る「リン」、「ビタミンD」などをたっぷり含んでいます。また脂肪の酸化を防ぎ動脈効果の予防に効果的な「ビタミン」や不足しがちな「カルシウム」、「ミネラル」なども含み、しかも脂肪分は3%以下。栄養いっぱいでしかもヘルシーな食品、それが「かつお節」です。

 そもそも「かつお節」は、生の鰹を乾燥させて作られているため、栄養分がすべて凝縮されているわけです。カロリーで言えば、春に収穫する生の鰹が100gあたり“114kcal”なのに対して、「かつお節」は約3倍の“356kcal”。鰹の主成分であり、「炭水化物」、「脂質」とならぶ三大栄養素一つで、毛髪や筋肉、体内の酵素などにいたるまで体のすみずみにまで必要な栄養素である「たんぱく質」も、“25.8g”が“77.1g”とこちらも約3倍となっています。この「たんぱく質」の最小単位を「アミノ酸」といいます。「アミノ酸」の種類は20種類しかありませんが、これがさまざまに組み合わさることで、必要な機能に応じで10万種類もの「たんぱく質」が作られ、私たちの体は活動しています。

 

 またこの20種類のアミノ酸は、「必須アミノ」と「非必須アミノ酸」に分けられます。

 「非必須アミノ酸」は体の中で作ることができる「アミノ酸」です。かつお節」で注目される「非必須アミノ酸」の一つに「アルギニン」という、成長ホルモンの分泌を促し、筋肉や骨格の成長を促進する成分があります。アルギニン」は体内でも合成されますが、成長期の子どもなどは十分な量が作れないため、食事で補給する必要があります。

 「かつお節」の「アルギニン」含有量は食品の中でもトップクラスで、しかも「アルギニン」の吸収効率を向上させるビタミンンB6が豊富に含まれており、吸収効率を考えてもおすすめです。

 また、20種類の「アミノ酸」のうち9種類の「必須アミノ酸」は、体内で作ることができず、どれか一つが欠けてしまっても筋肉、血液、骨などの合成ができなくなってしまう上に、バランスよく摂取しないと有効利用されないため、毎日体の外から偏りなく摂る必要があります。

 「かつお節」はなんとこの「必須アミノ酸」9種類をすべて含んでおり、まさにバランスのとれた食事のベースとして最適な食材と言えるわけです。中でも最近注目されているのが、「トリプロファン」と呼ばれる「必須アミノ酸」です。

 この「トリプトファン」は、老化などの原因の一つとされる活性酸素を除去する働きがあるとされ、アンチエイジング効果が期待でき、更年期症状や月経前症候群の緩和、コレステロールや血圧の調整などにも効果があるといわれています。最近では鎮痛効果があることも報告されています。

 さらに脳内の三大神経伝達物質と呼ばれる、集中力ややる気に関わる「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」、心のバランスを整える作用のある「セロトニン」の原料でもあり、特に「セロトニン」は「幸せホルモン」とも呼ばれ、注目されている物質です。

 その他、たんぱく質の一種である、かつお節の「ペプチド」は、人の体の中でエネルギーを作るのを邪魔する水素イオンを除去する働きがあることから、「かつお節」は疲労回復に効果があるとも言われています。

 また、骨を作ったり丈夫にするためには「カルシウム」だけでは不十分で、「リン」、「ビタミンD」がともにあって骨は新陳代謝をしながら丈夫な状態を保つことができるわけですが、「かつお節」にはこの「リン」、「カルシウム」、「ビタミンD」がすべてそろっているのもありがたいですね。

 さらに「かつお節」の「うま味」成分である「イノシン酸」も「だし」を美味しくしてくれるだけではなく、細胞を活性化させ代謝をアップしてくれる効果があり、脂肪が燃えやすくなったり、皮膚の生まれ変わりを助けて美肌効果があるとされています。

 栄養でありませんが、「かつお節」の香りには、食欲増進効果や、味覚を敏感にし、結果減塩効果が得られることも判っています。

 「かつお節」の香りは、百種類以上とも言われる多種類の香気成分の複合体で、現状では人工的に作り出すことは不可能だとされていますので、ぜひとも和食の「だし」には、本物の「かつお節」を使ってほしいと思います。