出汁素材「昆布」Ⅳ
<「だし昆布」の栄養>
昆布は「喜ぶ」に通じる縁起物としても有名ですが、 これは単なる語呂合わせではなく、栄養学的に見ても身体が喜ぶ、大変良い食材です。
栄養学のない奈良時代から、昆布は薬として使われるなど、経験的に身体に良いことが知られていましたが、現在その効用が化学的に次々と証明されてきています。
まず、有名なところでは、昆布のねばねば成分である「フコイダン」や「アルギン酸」といった水溶性食物繊維。これらは激しい海流の中で多くの魚介類とともに生きる海藻が、自らの身を守るためにつくりだす成分で、菌が入らないように守ったり、キズがつくとねばり成分が外にでて、健やかに保つための修復力・防御力の役割をしている、いわば「天然の防壁」ともいえる存在で、摂取すると糖質や脂質の吸収を抑え、コレステロール値の上昇を抑えてくれます。特に「フコイダン」は、免疫細胞を活性化する作用があり、崩れた免疫システムのバランスを調整するよう作用し、アレルギーの原因となるIgE抗体が過剰につくられるのを抑制する効果があり、免疫力を高め、アレルギーの改善作用があるといわれています。さらにガン予防にも効果あると言われています。
また、体の組織を作ったり、脳を構成する物質や脳内の伝達物質の生成を行い脳機能を向上させるなどの、大切な栄養素である「カルシウム」、「鉄」、「ナトリウム」、「カリウム」、「ヨウ素」などの「ミネラル」も多く含まれており、例えば、昆布に含まれる「ミネラル」量は牛乳の約23倍。「カルシウム」は約7倍、「鉄分」は約39倍も含まれています。
しかも昆布には、海の中にあるミネラルを吸収して、人間に有害な物はあまり吸収しないという特徴があり、さらに、人の身体に流れる血液やリンパ液は、海水の成分と似ているので、他の食品に含まれるミネラルに比べ、昆布のミネラルは体内への消化吸収率が高く、その約80%が体内に吸収されると言われています。
ただ、ミネラルの中で「ヨウ素」は、食べ過ぎると甲状腺の機能低下を引き起こすため、ワカメの20倍以上のヨウ素を含む昆布は身体に悪いと言う人もいますが、普通に食べる量では、通常問題ありません。
それどころか、「ヨウ素」は甲状腺ホルモンの主原料で、新陳代謝を促したり、子どもの場合では、成長ホルモンとともに成長を促進する働きをするために体になくてはならない「ミネラル」で、昆布を食べる習慣のある日本人はほとんど気にすることのない栄養素ですが、世界的には摂取不足が問題になっている「ミネラル」の一つですし、実は昔から昆布を食べ続けてきた日本人は、摂り過ぎたヨウ素を、甲状腺を素通りさせて尿に排出する能力が海外の人に比べて優れており、過剰摂取に対して強いことが判っています。
ただし、甲状腺疾患の方は、当然ヨウ素は控えたほうが良いので、お医者さんに相談してくださいね。
その他、昆布に含まれる褐色の色素成分「フコキサンチン」には、脂肪の蓄積を抑え、たまった体脂肪を燃やすたんぱく質「UCP-1」の活性を上げる、というダブルの作用があり、しかも主に内臓脂肪に届いて作用し、高めの血糖値を下げ、筋肉での糖の利用を促してくれるという素晴らしい成分ですし、昆布の“うま味”成分である「グルタミン酸」は、人がおいしいと感じる塩分濃度を低くしてくれるため、美味しく減塩することができ、胃にあるセンサーに作用して胃腸の働きを良くして過食を防いでくれるという、まさに美容と健康には欠かせない食べ物です。ちなみに、昆布のその色目からか、昆布が白髪予防になるとか、抜け毛予防になるとも言われていますが、それに関しては残念ながら科学的な根拠は見当たらないそうです。
このように、昆布は低カロリーで、「ミネラル」たっぷりの食材で、そのほとんどが煮出すことで、「だし」に溶け出すので、健康や美容のためにも「昆布だし」を積極的に利用してほしいと思います。
もちろん、煮出した後の昆布にも、食物繊維や栄養が残っているので、刻んでサラダに入れたり、つくだ煮にしたりして、ぜひ食べつくしてください。